小学校受験、中学偏差の高い小学校という選択肢

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 我が家が小学校受験を始めた当初、志望校を考える上で重視していたことがあります。それは中学受験での偏差値が高いことです。

 小学校のある私立中学は中学偏差値が低くなる傾向があります。一般的に偏差値が高いと思われるのは、四谷大塚偏差値で60を超えることでしょう。

「中学でも偏差値60以上の小学校は」

 小学校受験の難関校で四谷大塚の偏差値が60以上の学校は慶応、早実、青山、立女、雙葉、白百合、東洋英和くらいです。

 小学校受験では最難関の暁星も立教も学習院も成蹊も60は超えていません。

 我が家は妻が中学受験の仕事をしていることもあり、志望校を調べるに当たって、中学受験の偏差値も確認していました。妻のプライドが中学受験偏差値の低い学校に娘が通う未来を受け入れたくなかったからです。

 だから最初は当然のように早実を目指そうと考えていました。しかし、神様はいらっしゃるものです。年少でジャックに通っていた頃に妻が仕事で早実や青山に通っている子を担当する機会があり、生徒たちの話を聞いて「とても庶民の我が家が楽しく通える学校ではない」と知りました。

 経済状況で確実に劣る我が家が学校で楽しく過ごすには「勉強ができる」という強みを持つ以外にはありません。それは娘たちが圧倒的に上位の点数を取って合格するということです。

 早実を受験するなら「年長勉強」「学校別早実」「受験体操」「受験絵画」「集団行動観察」「聞き取り話し方」を最低でも受講しなければなりません。季節講習の「生活習慣」も受講する必要があるでしょう。

 我が家が受験した当時で、年長勉強が7万円、早稲田クラスが5万円、体操・絵画・聞き取り話し方がそれぞれ3万円でした。全部受講するとなると月額一人21万円です。予算的にそれら全ての講座を二人分受講することはとてもできません。満足に講座も取れないのに、上位で合格するなんてあり得ません。

 早実にご縁を頂けるご家庭は、当然のようにそれらの講座全てを受講できる家庭だから、庶民の我が家が通えるわけがないのだと、年少の終わりの段階であっさり目指すのをやめました。

 我が家が私立の小学校に通って、周りのご家庭の経済状況についていけないのは最初から分かっていました。だから学校で娘たちが楽しく過ごせるためには、勉強かスポーツである程度優位に立っていないと楽しく過ごせないと思っていました。

 妻は勉強が得意ですし、私は演劇をしていて身体を動かすことは得意です。小学校受験においては、娘たちをそれなりのレベルに仕上げる自信がありました。

 年少のスタートからジャックに通っていましたし、上位100には入れなくても上位200には当然入れるだろうと思い込んでいました。だからトップ数校の学校じゃなければ勉強と運動で上位にいられるに違いないと思っていました。とんでもない上から目線です。

 結局四谷大塚の偏差値で60を超えるような学校は小学校受験でもトップの数校です。だから、小学校受験では二番手と思われる(年少の当時は勘違いしていました)学校で、四谷の偏差値55前後の学校なら、中学に上がっても偏差値の低い学校に通っているとは思われないだろうし、割りと良い気分で学校生活を送れるだろうと思ったのです。本当にひどい上から目線です。

 年少のスタートからジャックに通っている我が家は当然その水準の学校には行けるだろうと勘違いをして年中の一年間を過ごしました。

 勘違いに気づいたのは年長になってからです。学校別クラスの子たちに比べて、娘たちはペーパーのできがそれほど良くありませんでした。絵や製作は苦手でした。唯一の救いは体操が良くできたことですが、我が家の第一志望校は体操のウエイトが高くありません。

 新年長に上がるまでは、ジャックの公開している合格者数と学校別クラスの人数を勘定して、そのクラスに在籍していれば合格できるだろうという程度に考えていましたが、大きな勘違いだったことに気づきました。

 ただでさえ我が家は双子で狭き門です。家庭点数も負けています。ご縁を頂くには娘たちが試験当日に高得点を出すしかありません。肝心の娘のペーパーの点数が劣っていては、どこにも合格しないと絶望しました。

 運良く第二志望の学校にご縁を頂けて、今のところ娘たちも良い気分で楽しく通っています。

「中学偏差が低くても」

 しかし、今の学校は中学偏差値の高い学校ではありません。入学する前から四谷大塚に入会したのは、中学受験でより偏差値の高い学校へ通わせたいという妻の思いがあったからです。

 小学校受験が終わった直後は娘たちはそのままの勢いで、勉強が得意になると思っていました。何と言っても小学校受験のために毎日机に向かう習慣ができているのです。中学受験をするに当たって大きなアドバンテージになると思っていました。

 ところがいざ小学校に上がってみると、下の子は勉強が嫌いです。学校の宿題だけでも渋々やっています。受験直前まで苦手だった絵や工作が好きで、放っておくと何時間でも何か作っています。こだわりが強く、一言で言うと不思議ちゃんです。上の子は大人のご機嫌伺いタイプなので、もし中学受験をしても頑張って勉強するかもしれませんが、下の子には絶対に無理です。上の子も妻の機嫌を伺ってテストの点で嘘をついたり、カンニングをしたりするかもしれません。

 今のところ、二人とも学習面に悩みはないのですが、今後もっと勉強が難しくなっていった時に、落ちこぼれてしまう可能性もあります。

 何故なら娘の半分は私の血です。私は勉強が得意ではないですし、学校からの連絡を見忘れたり、懇談会の時間などを忘れていたりして妻からよく怒られています。私立の学校に娘を通わせているのに、妻にフォローしてもらわなければ娘の学校のこともきちんとできません。

 それを思うと中学偏差値がそれほど高くない学校に通っていることが良いことに思えます。幼稚園の頃には、我が家の娘が勉強嫌いになるとは思ってもみませんでした。中学から頭の良い子が入ってきても、問題ないと思っていました。むしろ娘が頭の良い学校に通っていると言われることが、我々親にとって良い気分だと思っていました。

 中学受験でも難関校に通っていたら、中学から頭の良い子が入ってくることを怯えなければなりません。そうなると、勉強以外の好きなことをのびのびとやらせているわけにはいきません。

 子どもは本当にどんな方向に育つか予想できません。それなりに未来を想像してプランを描いて子育てをしてきたつもりですが、予想外のことがたくさんあります。

 間違いなく言えるのは大学まで受験をしなくても良い学校に入れて良かったということです。神様は1番合う学校にご縁を結んで下さるとジャックの先生が仰っていた言葉を日々噛み締めています。

 中学受験が必要な学校や、進学校と呼ばれる学校に通っていたら、最優先しなければならないのは勉強です。娘たちは走るのが得意ですが、いくら足が速くても成績が良くなければなんの自慢にもなりません。

 子どもがどんな成長をするかは、大人になるまで分かりません。勉強が得意だった子も、偏差値の高い学校に入れば、その中で勉強が得意だという位置を維持するのは大変なことです。勉強もできてピアノも上手な子やスポーツが得意な子もたくさんいます。

 小学校の頃には運動が得意でも、有名な大学附属は高校になると全国からスポーツ推薦の子がたくさん入ってきます。

 子ども自身も自分の得意なものを見つけて、学校で楽しく過ごせるように一生懸命です。

 子どもに合う学校を見つけるようにとよく言われますが、まだ幼い段階で合う学校を見つけるのは不可能です。ご縁のあった学校は神様が選んで下さった学校だと信じて、その時々に応じて柔軟に対応していくことと、親も一緒になって子どもの得意を探していくことが家庭の努めなのではないでしょうか?

 望んでいた偏差値以下の学校に進学を決めると、親は悲しい気持ちになるかもしれません。ですが、第一志望の学校に合格できる子の方が少ないのです。学校の方針や指導に合わせて、家庭のあり方や親の考え方を変えていけば、どの学校も素晴らしい学校に思えるはずです。

 受験後を幸せに過ごせるかは、入学後の親の心次第です。

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