受験後の親の人生。中学受験と小学校受験を比べて③

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受験後の親の人生

 一般的に我が家のような庶民の共働き夫婦が子どもの私立受験を考える場合、まずは早慶を目指して、時間の経過とともに「まあ、MARCHの附属でもいいか」と考えるご家庭が多いですよね。

大学の附属に入ってしまえば

 なぜなら、小学校や中学校からそれらの大学の附属に入ってしまえば「もう受験は終わり」で、塾代がかからなくなると考えるからです。

 小学校や中学校から私立を考えておられる多くの親御さんは、ご自身が早慶上智や国立の大学を卒業されているのではないでしょうか?

 高校生の頃の僕にとっては、早慶はもちろんMARCHも高嶺の花でした。数学は赤点だったので国立はあり得ません。そもそも僕は高卒で文学座の俳優養成所に入って、大学は後から行きました。真面目に受験に取り組んでいないので、威張れるような大学ではありません。だから我が家は学歴格差婚です。

 私立受験を考えられるくらいの収入を得るためにはそれなりの学歴が必要でしょうから、夫婦ともにMARCH未満というご家庭の方が少ないのではないでしょうか。子どもには自分と同等かそれ以上の大学に行ってほしいというのが親心です。 

 MARCH未満の学校なら行く意味がないと考えるのは無理からぬことです。

 

 娘たちの学校は大学の附属ですが、そういう意味では「意味のない学校」になってしまいます。

 ですが当然我が家では意味がないなんて思っていません。1つは僕が低学歴なので充分立派な学校だと思えるから。もう1つは妻の仕事柄、中学受験と大学受験の大変さを知っているからです。

医療系でも理系でもないので

 我が家は医療系の家庭ではないですし、理系でもありません。普通の庶民なので娘たちには普通に就職してもらわなければなりません。

 親が医療系でも理系でもないから娘たちも文系学部の方が良いと思っています。娘たちがもし医療系や理系に進みたいと言ったとしたら何も力になってあげられないからです。それに娘たちが大人になったときに、チンプンカンプンな数式や元素記号の話をされるよりも文学や歴史の話を一緒にしたいです。子どもの話を理解できないことは悲しいです。

 高校までの勉強と部活動を頑張ってもらって指定校推薦で良い大学に行ってほしいというぼんやりとした野望はありますが、そのまま内部進学で大学まで進んでも良いとも思っています。

 小学校受験でMARCH以上に行こうと思ったら、早実、幼稚舎、青山、立女しか選択肢がないので超難関ですし、中学受験でMARCH以上の附属は狭き門です。

 どうしても「医学部」へと考えるのなら、小学校受験をして中受校に入り、中学受験をして中高一環の進学校に入る必要もあるでしょう。実際に娘たちが通っている学校の中学偏差値よりも上位の進学校はお医者さんのご家庭ばかりのようです。

 小学校から入れる白百合や暁星などは医学部合格を多く出しています。ですがそれらの学校は小学校受験でも難関です。実際妻のお客様には白百合、暁星に通う医師のご家庭のお子さんが何人もいます。みなさん、中学受験を経験している子のほうが大学受験においてはアドバンテージがあることを知っているので、小学生のうちから大学受験を見据えた準備をしています。優秀な進学校に行けば自然と学力が上がるわけではありません。

 妻の生徒からの話を聞く限り、優秀な進学校はやはり医師のご家庭のお子さんが多いようなので、みんなが同じように医学部受験を目指すという環境を買っているのでしょう。

 だから最初から医学部を目指す気のない我が家がそういった進学校に通うことには意味がありません。

実際に受験の進学塾に通うまでは

 実際に受験の進学塾に通うまでは、我が子は当然偏差値60くらいはあるだろうと思ってしまうものです。

 だから最初はほとんどの人が早慶と思っています。僕のお客様は子どもが新小4で入塾した際「このまま頑張れば法政あたりを目指せると思います」と言われて、バカにされたと怒っていました。

 先日妻が会ってきたお友達も

「せめて明治くらいに行ってくれれば良い」

と言っていたそうです。

 みなさん簡単に明治くらい、法政くらいと言いますが、早慶を狙ってMARCHの附属を併願できるのは四谷大塚の偏差値で60以上の子です。偏差値60は大変な数字です。SAPIX偏差値で60ならαクラスです。早稲田アカデミーや四谷大塚でもSクラスでしょう。

 もし新小4で入塾したときに偏差値が40台でも、毎年10ずつ上がって6年には60になると思い込んでいる方が多いようです。妻は20年以上講師の仕事をしていますが、実際に毎年偏差値が10ずつ上がって、40から60になった子は見たことがありません。

 新4年から1年経っても偏差値が上がらないと焦ります。それでもまだ希望もあるでしょうから転塾したり、個別指導をつけたりします。例えば最初はSAPIXにいて下位のクラスから上がれないため転塾する場合、転塾先の塾では上位に入れると思うでしょう。      

 SAPIXのレベルが一番高いことはみんなが知っているからです。それでも上位に入れず偏差値も上がらないと、親の焦りはどんどん強くなります。魔の5年生です。これは実際に経験しないと分かりません。誰もがいざその学年になるまでは「うちの子は違う」と思っています。

 毎年大勢の中学受験生を担当していても、偏差値60以上をキープしている子は極僅かです。それにそういう子は最初から高い偏差値を持っています。

 MARCH以上の大学附属校を目指せるのはそのクラスの子たちです。その位置をキープするのは大変なことです。我が家の娘たちがそのクラスにいる自信はありません。

 結局大学受験でもMARCH以上に現役で合格しているのは、四谷大塚の偏差値で55以上の私立進学校の子か、都立でもトップクラスの高校の子が多いようです。

 ある程度のところで着地点を見つけておかないと、親はずっと子どもの受験に付き合わなければなりません。僕達親の今後の人生を考えると、我が家は今の学校で充分だと思えます。

親にとってのメリット

 子どもにとって、小学校受験をすることで習い事が続けられたり、進路を決める時間に余裕を持てたりというメリットはよく論じられているし僕もブログに書いています。が、親にとっても、子どもの受験から早く開放されることにはメリットが多いのではないでしょうか。

 子どもと一緒に過ごす時間はごく僅かです。子どもたちが手を離れて夫婦二人で過ごす時間の方がずっと長いです。その時に仕事にやりがいを見出していたり、趣味を持っていたりしないと、子育てが終わったことによる虚脱感が大きくなりそうでとても怖いです。

 何も持っていない親は子どもにとって荷物でしかありません。

 我が家が小学校受験で終わりにしたかったのは、子どもの荷物になりたくなかったからです。

 もし我が家が中学受験をするとしたら、小学校受験当時よりも僕達は6年も歳をとっています。その間に仕事のキャリアにも、趣味を作る時間にも差が生まれます。小学校受験は親の受験です。仕事も制限しなければならないし、趣味など考えるゆとりはありません。

 小学校受験の場合、そもそも子どもが小さいので受験をしようがしまいが制限が必要なことは変わりません。でも、中学受験も親の受験です。結局同じように仕事は制限しなければなりません。子どもが勉強をしている横で親が自分の趣味に時間を使うことはできません。

 僕は役者だった頃、役によって体型を変えていたので痩せることは簡単だと思っていました。でも、年齢に伴ってだんだん痩せるのは難しくなってきています。去年まで余裕で着られていた服が何となくきつくなっています。自分ではそんなに変わっていないつもりでも、娘たちから太っていると言われます。僕は懇談会などで学校に行く機会も多いので、娘の友達と会って話すこともあります。友達も

「〇〇のお父さんは少し太っているね」

と言っているそうです。

 妻もパッと見は痩せていますが、若い頃のスカートははけません。最近はウエストにゴムが入った服を着ています。

 妻は水泳が好きで体型維持の目的もありプールに通っています。僕も妻に影響されて、小学校受験が終わった頃からプールに通っています。自分の体型のことに気を回せるのは、子どもの受験から開放されているからです。子どもの中学受験に取り組みながら自分の体型改善のためにプールに通うゆとりはありません。

 僕は年齢的にもまだ30代なので「太ってきたから食事を制限して、運動強度を上げて体型を改善しよう」というモチベーションを持つことができます。娘が中学生になる頃には僕は40代です。そこから一念発起して運動を始めるのは大変だと思います。

 中学受験は子どもが勉強して、親は支えるだけだと思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、塾では毎週のようにテストがあります。子どもの偏差値の浮き沈みを気にせずに、仕事に趣味にと時間を割けるのはとても強い精神力の持ち主です。それに本当に気にせずにいたら、中学受験は成功しません。

親の人生を考えると

 受験後の親の人生を考えて、仕事をバリバリしたい、趣味の時間を持ちたいと思うなら、小学校受験に取り組んで、身の丈に合った着地点を見つけて満足するしか無いように思います。

 小学校受験は親も若いですから、終わってからでも充分仕事のキャリアを積めます。自分のために使える時間も確保できます。

 小学校の3年生くらいは、本来なら子どもから手が離れだして自分の時間が増えてくる時期です。ところが中学受験はそこから三年間が本番です。親の今後の人生を考えると機会の損失です。

 僕も妻も、娘たちの成長に伴って仕事の時間も増やせています。趣味の時間や運動の時間も増やせています。

 子どもが小さい頃は本も読めませんでした。僕は映画が好きで、若い頃は暇さえあれば映画を観ていましたが、子育てをしながら家で映画を観るための2時間を確保するのは困難でした。

 娘たちが小学生になってようやく本も少しずつ読めるようになりました。難しい映画じゃなければ、娘たちも一緒に観られるようになりました。

 親が子どものためだけに時間を使おうとしても必ず無理が生じます。自分のために使える時間は絶対に必要です。

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