受験が終わって思うこと

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双子の姉妹

 娘の人生はもちろん親である僕たちの人生も考えて、その上で私立小学校に娘を通わせる人生が欲しかったので、思いっきり背伸びをして小学校受験に挑みました。だから志望校も、その学校に通えば自分たちの暮らしがどのようになるかを想像して選びました。

「カトリックの女子校に通わせたい」

 それが僕たち夫婦の最初の希望でした。妻は高校がカトリックの女子校でした。高校が楽しかったという思い出があり、娘にも同じような教育をと思ったそうです。

 それに僕も妻も庶民育ちで品格とは縁遠い暮らしをしていました。規律の厳しい伝統的なカトリックの女子校に通うことで、娘の人生は豊かなものになると思っていました。

「カトリックの幼稚園に通いました」

 だから幼稚園もカトリックの幼稚園を選びました。家でも食事の前にお祈りをしたり、クリスマスに幼稚園で配布される聖歌を家族で歌ったり、僕も楽しく過ごしました。

 第一志望校もカトリックの学校だったため、幼稚園の登下校時には園庭のマリア様にお祈りをして、僕も近所の教会に日曜の礼拝に通いました。

 因みに僕も妻も信者ではないので完全に偽物です。

 我が家が住んでいる地域はそれほど小学校受験が盛んな地域ではありません。中学受験は割と多くのご家庭がするようです。

 ですが、娘の幼稚園は小学校受験をする率が高く、地域で小学校受験をしようと考えているご家庭がみんな集まっているのではと思うほどです。

 だから結局はお母さん同士でお教室や志望校の探り合いをしていました。我が家は入園前から受験を決めていたので、どうせ年長になって探り合いに巻き込まれるならと、端から幼稚園の保護者とは一切関わりませんでした。

 親同士が仲良くしないと、子どもが仲間はずれにされるというのは絶対に嘘です。現に娘たちは幼稚園に友達がたくさんいて、幼稚園が大好きで楽しく通っていました。

 子どもには子どもの世界があります。親同士の関わりなんて関係ないです。

 それは小学校に通っている今でも同じです。よく私立小学校はお付き合いが大変だから小学校受験はしないと言っておられる方がいらっしゃいます。ランチが1人1万円とか。そりゃそういうゴージャスなお付き合いをされているご家庭同士もあるでしょうが、少なくとも我が家はしていません。でも、娘たちは学校に楽しく通っています。

「本音は」

 お母さん同士でお喋りしている暇があるなら、その日にやるペーパーの準備をしている方がよっぽど生産性の高い時間の使い方です。庶民の共働きの小学校受験は何より時間が足りないのですから。

 親同士のお付き合いは、子どものためではなく本音は親がそれをしたいからなのだと思います。人間誰でも建前と本音があります。

 妻にしても、本音を言えば立派な制服を来た娘と歩きたかったようです。小学校受験に取り組むモチベーションの1番がそれでした。

 妻は上昇志向が強いので、いつでも自分より上の人と関わりたいと思っています。だから立派な学校に通っている生徒の立派な親御さんと関われる今の仕事はぴったりなのだと思います。

「第二志望は」

 第一志望の学校は、僕たち夫婦の憧れの気持ちだけで選んだようなものです。

 第二志望はもっと現実的に選びました。内部進学ができるとか、給食があって、アフタースクールがあるといった。実際にそのおかげで我が家はとても気楽に小学校生活を満喫できています。将来の保険があるため習い事もさせられます。中学受験をするとなったらピアノもお習字も習えません。

 第二志望の学校に通うことが決まって、我が家は食事前のお祈りも登園時のお祈りも止めてしまいました。日曜の礼拝も行かなくなりました。元からインチキですから当たり前です。

 もし、第一志望校にご縁を頂いていたら、きっと今でもお祈りを毎日していたでしょう。ですが、規律が厳しくてお弁当の学校に通っている図が今は全く想像できません。多分ギブアップしています。

 受験期は精神状態がハイになっているので、自分たちはできると思い込んでしまいます。毎朝4時に起きてお弁当を作るなんて、僕には不可能です。

 お祈り以外にも受験が終わって変わったことはたくさんあります。

「あんなにピシッとしてたのに」

 今年はコロナの影響で行っていなかった行事がどんどん再開されてます。授業参観もその一つで、今年は春と秋と2回公開授業が行われました。春の授業公開は数日に渡って行われ、各家庭1名ずつ参観可でした。たまたま二人の公開日が違っていたので、僕と妻でそれぞれ1回ずつ観に行って、僕は下の子の授業を観に行きました。我が家はいつの間にか上の子と妻、下の子と僕という組み合わせができています。

 参観した授業は体育で、運動会の徒競走の練習をしていました。自慢ですが娘たちはジャックで体操が得意でした。下の子は模擬試験で2位を取ったこともあります。ピシッと立てます、一生懸命動きます。走るのも速いです。縄跳びもゴム跳びくぐりも上位でした。だから体育の授業参観は楽しみでした。

 ところがいざ行ってみると、立ち方はグダグダだし、体操座りはしないし、回れ右は左に回る始末です。出ていってひっぱたきたいくらいです……。

あんなにかっこよかった君はどこへ行ったの??

 ちんたら動くし、後ろの子に「列がずれている」と注意されています。そのくせリレーではごぼう抜きを演じて、「イエーイ」と大喜びしています。余計に腹がたちます。

お願いだから、ピシッとして下さい……。

 年長の頃は脱いだ服をいつも綺麗に畳んでいました。制服もハンガーに掛けていました。ところが今では脱いだら脱ぎっぱなし、制服も丸まったままです。

「畳みなさい」

「ハンガーに掛けなさい」

と言うとしぶしぶやります。部屋の中も机の上も書いた絵や学校のプリントでごちゃごちゃです。

 進んでしていたお手伝いも全くしません。洗濯物の取り込みなど頼むと文句を言い出します。

 辛いのは、僕も片付けが全然できないことです。毎日妻から怒られています。僕の悪いところが似てしまったのかと思うと強く言えません。ですが娘たちが僕のようになってしまったら困るので、自分のことは棚に上げて娘たちには注意しています。

「受験が終わると」 

 勉強時間だって年長の頃はそれこそ毎日ペーパーを2時間も3時間も平気でやっていました。今では宿題を30分やらせるだけで一苦労です。

 僕も妻も小学校受験のために無理して丁寧な言葉遣いをしていました。ペーパーもやらないと周りの子に追いつかないから、必死にやっていました。

 受験が終わって元通りになったということなのだと思います。

 娘たちはベビーから続けている水泳とジャックの体操のおかげで走るのが好きです。水泳は受験期も休まずに続けていました。

 受験が終わってすぐにはじめた算盤のおかげで計算が好きです。

 確かにぱっとみは幼稚園の頃のほうがちゃんとしていたように思います。でも受験期は娘たちにとっても特別な期間だったのだろうと思います。ずっと気を張っていたのだと思います。

 今は気を抜くところは気を抜いて、友達とふざけるのが楽しい。そういう普通の小学生で良いのだと思います。

 

 幼児は親から褒められることが1番です。親が褒めてあげれば一生懸命に取り組みます。だからお手伝いもするし、お片付けもします。やれば褒められるからです。

 今は娘も成長して親から褒められることが1番ではなくなりました。それぞれに違うことに興味を持っていますし、やりたいことがたくさんあります。これも成長の過程なのだろうと割り切っています。

 親が出る幕はだんだん減っていって、小学校の友達や習い事の先生との、子どもの社会での関わりのほうが大事になってきたということです。

 親が、子どもらしい成長を気楽に見守ることができる心のゆとりを持てることは良いことです。小学校受験を頑張ったおかげです。

 今回はこの辺で。読んでくださってありがとうございました。