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子どもを授かったことが分かってから生まれてくるまでの間に、想像して夢見ていたことがあると思います。
僕は娘と一緒に釣りをする、芝居を観に行く、歌を歌う、絵を描くことを夢見ていました。その時イメージしていた我が子は小学生くらいの大きさです。オムツ替えとミルクのために、2時間おきに起きる毎日を思い描いて夢見る人はあまりいないですよね?
「どんな暮らしを想像していた?」
自分の趣味を子どもと一緒に楽しむ暮らしを思い描いていても、一緒に楽しめるようになるまでが長いんです。いざ思い描いていた年齢まで子どもが成長したときには、自分の趣味なんてもう何年もやってないという方が多いのではないでしょうか?
僕も何年も釣りには行っていません。多分今後も行く機会はないと思います。休日は娘の習い事です。
でも、芝居を観に行く、歌を歌う、絵を描くことはできています。私立小学校に入れたおかげで、概ね思い描いていた通りの子育てをしています。
子育てをする上で避けて通れないのが子どもの受験です。東京では中学受験をする割合がどんどん増えています。そして開始時期がどんどん早くなっています。新4年生から始めて間に合ったのはもう過去です。入学前から準備を始めるご家庭も増えています。
そうすると、本来なら待ちに待った子どもと楽しく過ごせるはずの6年間を受験の準備に充てることになります。
僕は小学校の6年間偏差値とにらめっこして、塾の課題に追われる小学校時代は夢見ていません。
僕は小学校受験を乗り越えたから、夢見ていた通りの子どもとの時間を手に入れることができたと思っています。親と子どもが一緒の時間を過ごせるのは小学校の間だけです。娘たちはまだ幼いですが、それでも年々僕達から離れていっていることを感じます。自分が中学生だった頃を思い出してみて下さい。親と遊んでいましたか?
「夢と現実」
双子の上の娘とYou Tubeで色んな中学校の合唱の動画を一緒に観ました。
やっぱり豊島岡とか大妻中野とか驚くほど上手です。頭も良くて歌もうまい。完璧!
僕は演劇が好きで、合唱が好きな地方の高校生で、役者になる夢を見て、劇団の養成所を受験して上京しました。まさか双子の娘の小学校受験をするとは、夢にも思ってませんでしたね。
類は友を呼ぶで、上京してからできた友達は劇団員、バンドマン、お笑い芸人、を目指していた連中ばかりです。そして僕も含め多くの友人が夢を諦めて、今は違う暮らしをしています。僕も含め、そんな友人たちには共通点があります。みんな地方出身です。
妻はマイナーなバンドや劇団の芝居が好きで、僕と知り合った当時の趣味はライブに行くことでした。妻は東京出身です。妻とよく話すことは、東京で生まれ育つと、そういう華やかな世界を夢見ることがないということです。
妻の妹は高校受験で大学の附属校に進学しました。幼稚園からある学校です。そこには下から来ている芸能人の子ども、会社経営者の子どもがたくさんいて、妻の妹は高校生の時に悟ったそうです。今は小学校の先生をしています。
東京の私立の学校に通うと、同級生に芸能人や俳優の子どもがいたり、プロの音楽家やプロスポーツ選手の子どもがいたりするでしょう。私立じゃなくても、児童劇団に通っているクラスメイトが一人や二人いたそうです。
子どもの頃から周りにそういう子がいて、なんで自分がそういう世界で生きていけると思えるのか甚だ疑問だと妻はよく話します。だから子どもの頃に憧れても、どこかの段階で現実を知って夢を追いかけないそうです。
「確かにな」と思います。少なくとも僕が通った小中高にはそんな子は一人もいませんでした。
有名な俳優やプロスポーツ選手にも子どもがいることは考えれば解るのですが、地方で生きていた僕にとっては遠い世界の人過ぎて、現実味がないのです。だから大人になっても夢を観続けられたのです。
豊島岡の子たちはあんなに素晴らしい合唱をするのに、誰もオペラ歌手は目指していないでしょうね。多くの子がお医者さんを目指しているでしょうから。
今はYou Tubeで色んな物が観られます。もし僕が高校生の頃に、東京にはあんなにすごい高校生がいることを知っていたら、夢は観なかったかもしれません。あんなにすごい合唱部の子がプロを目指さないのです。なぜ僕が目指して成功するのでしょうか。僕はピアノもバレエも習っていません。
「娘が惨めな思いをしないように」
娘たちはすでにミュージカル女優やピアニストは夢見てません。学校には自分たちよりピアノが上手な子やダンスが上手な子がいるから無理だと言っています。私学に通っているため既に現実が見えています。でもピアノも好きで劇団四季も好きです。
ピアノもバレエも女性としての教養です。たとえ趣味でも、子どもの頃にやっていないことを大人になってから始めるのは大変なことです。僕も妻もピアノは弾けません。
娘の通っているピアノ教室には、発表会で子どもと連弾するお父さんがいて羨ましいです。
妻も高校から割と有名な私立の進学校に通いました。お嬢様学校で同じ学年にピアノを弾けない子は妻も含めて二人だけだったそうです。中学生まで好きだった合唱が一気に嫌いになったそうです。
娘たちに習わせているピアノも、僕か妻かどちらかが教えられれば上達も早いのでしょう。子どもがいなくて自分たちだけの人生だったら、ピアノが弾けないことも気になりませんでした。
親になってみると、我々にはできないことが多くて惨めな気持ちになります。だからせめて娘にはと考えることは親として当たり前です。
我が家の娘たちは小学校に入ってからピアノを始めました。もし小学校受験から撤退して中学受験を選択していたら、ピアノは習っていません。
劇団四季も小学生になってはじめて観に行きました。娘たちを連れて舞台を観に行くのが僕と妻の夢だったので、ライオンキングのカーテンコールで立ち上がって夢中で拍手している娘を観て、妻は泣いてました。小学校受験を諦めていたら観に行ってません。
庶民の我が家には受験と芸術ごとを並行してできる力がないからです。
「中学受験の勝ち組」
豊島岡や大妻中野の合唱部の子たちがすごいのは、彼女たちが中学受験の成功者だということです。高い水準の音楽の習い事と受験勉強を並行していたということです。
ですが、実は妻の生徒さんにはそういう子がたくさんいます。勉強は個別の先生に観てもらって、ピアノの先生にも家に来てもらっているというお嬢様はたくさんいらっしゃるのです。
実際に妻が担当して偏差値の高い中学に合格した子の中には、入試のぎりぎり数ヶ月前までピアノをやめずに続けていた子がたくさんいたそうです。そういう子は中学に進学してからもピアノを続けています。
ピアノを続けられる偏差値があるという精神的なゆとりと、自宅に先生を呼べる経済的なゆとりの両方が必要です。
ものすごくハイソサエティな話です。当然庶民の我が家には真似できません。ですが、中学受験で成功されている多くはそういうご家庭の子です。
「諦めないで下さい」
小学校受験を撤退して中学受験にシフトチェンジしようかという意見をよく見かけます。新年長が始まると急に大変になります。模試で我が子の立ち位置も分かってきます。当初の希望から遠ざかっていくような心持ちになります。
だから、中学からなら希望している難関校に入れるのではないかと思いたくなります。我が家でも新年長の春は辞めるか続けるかとても揺れていました。
ですがそれは僕が役者を目指していたことと同じで、少し考えれば当然の現実が見えていないのではないでしょうか?
中学受験では、難関小学校にあと一歩で及ばず涙を飲んだ優秀なリベンジ組や、最初から中学受験を見据えて年少から中学受験塾のキッズクラスに通っていたり、中学受験に力を入れている私立小学校に通ったりしているご家庭のお子さんと闘うのです。
「小学校受験は無理そうだからやっぱりやめた」
という思いつきで闘うのは厳しいと思います。目の前の苦痛を保留するために正当化して、良いように考えているだけだと思います。せっかく小学校受験を始めたなら最後までやりきるべきです。
妻がこれまで観てきた中には、小学校受験をやめて中学受験に切り替えたけど、結局偏差値が上がらず中学受験もやめてしまったご家庭も実際あったそうです。
途中で諦める人は、次も途中で諦めます。
僕は演劇を諦めた人間です。僕の俳優養成所の同期にも、今テレビで活躍している人がいます。彼は諦めなかったから成功したのです。それと同じです。
小学校受験を撤退しようと考えるということは、難関の附属校に入るのが難しいと判断したからで、それ以外の私学ではコストパフォーマンスが悪いと思うからではないでしょうか?撤退して中受というのは、庶民のご家庭ほど陥りやすい考えだと思います。
「乗り越えれば可能性は広がります!」
せっかく小学校受験に乗り込んだのなら、最後までやりきったほうが良いと思っています。学校探しに力を入れ全滅のリスクを減らして、絶対に私立に行くべきです。
大学をゴールにするのなら、私立に通っていれば指定校という選択肢があります。私学ならではの特別な推薦枠もあります。実際にそういう推薦を最初から狙っているご家庭もありますし、妻も担当したことがあります。小学校受験がゴールではありません。当初の目標が遠いと思ったら、納得できる着地点を探すことに力を使った方が良いです。
公立より悪い私立の小学校はありません。なぜなら有料だからです。有料の物より優れた無料のものなんてありえません。年長になってからでも納得できる学校は必ず見つけられます。そして、行けば絶対に楽しいです。
もし我が家が娘に中学受験をさせるなら、娘が親になった時に我々と同じように惨めな思いをすることを良しとするということです。中学受験で成功する保証はどこにもありません。
庶民の我が家では、結果として何もできない、勉強もイマイチという子にしてしまうかもしれません。中学に入ってからではピアノは始められないのです。
スポーツも習っていなくて、音楽もできない子が中学で何部に入れるのでしょう。妻の妹は小学校の教員になるにあたって、ピアノを習っていないことがコンプレックスだったそうです。
とりあえず娘はピアノがある程度弾けて、水泳が得意な子になることができるかもしれません。小学校受験で納得できる着地点に着地できたからです。
上の娘は豊島岡の合唱を観て
「この合唱部に入りたい」
と言っていました。
いや、入れないよ……。
妻が担当した豊島岡に合格した子はみんなお医者さんのお嬢さんで、国立か私立の小学校に通っていました。
上の娘は今、「名探偵コナン」に夢中で将来は警察官になるそうです。
せっかく受験をしなくて良い環境にいるのです。色んなことに興味をもって、じっくり将来のことを考えてほしいと思います。
今回はこの辺で。読んで下さってありがとうございました。
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