お教室は楽しいです

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女の子と赤ちゃん

「小学校受験をふりかえって」

 妻が私立小学校を受験をしようと言い始めた時、地方出身&低学歴の僕にとって、当然私立小学校など縁のない世界で、経済的にも不可能だと思いました。ですが、我が家では妻が絶対的な権力を握っています。僕には反対する権利などありません。だから、最初は仕方なくジャックに通い始めました。

 当時僕が抱いていた小学校受験に対するイメージは、小学校受験に否定的な多くのお父さんたちと、おそらく一緒だったと思います。

1、幼児のうちから勉強の詰め込みは可哀想

2、私立小学校はお金持ちが行くところ

3、子どもは外で遊ぶことで学ぶもので、家で勉強ばかりだとひ弱になるに違いない

4、子どもは「子どもらしく」育てたほうが良い

5、大学は大学受験で行くもの

と、まあこんな感じです……。

 当時の僕は「子どもらしい子ども」がどんな子どもなのか、はっきり言ってよく分かっていなかったはずですけどね……。とにかく漠然と、受験用のお教室で、お行儀やら何やらを躾けられた子どもなんて、「コドモラシクナイ」と思っていたんですね。いわゆる「普通で良い」というやつです。

 

「こどもらしいこども」

子どもらしい子ども

 ところが、ジャックに3年間通って、たくさんの子どもたちを観てきましたが、元気いっぱいで、たくましくて、「子どもらしい」子ばかりでした。

 ざっくばらんに言うと、小学校受験の準備とは「私立小学校が望む子ども」を育てることです。じゃあ、それはどんな子どもかと言うと

1、自分のことは自分でできる

2、先生の話をよく聞いて、理解し実行できる

3、お友達を大事にし、協力できる

4、諦めずに、最後まで自分の力でやり遂げる

5、色んな物に興味をもち、何にでも前向きに、全力で取り組める

 これって、よく大人がイメージする「子どもらしい普通の子ども」ではないですか?むしろ理想的な……。

 実際にジャックの授業を参観して、小学校受験に取り組みだしたら、それまでの価値観がガラッと変わり、どんどん楽しくなっていきました。

 僕の考え方を変えてくれたのは、ジャックの年少体操の授業です。

 実は、我が家はジャックに入会した当初は、ケチって「年少勉強」しか取っていませんでした。体操は近所の体操教室に通っていたので、必要ないと思っていたからです。ですが、「ジャックの体操は普通の体操とは違う」と説明を受けた妻が結局申し込んで、勉強のスタートから1ヶ月遅れで、体操にも通い始めました。

「ジャックの体操で価値観が変わりました」

 そこで、行われていたのは、確かに普通の体操教室とは違うものでした。「指示行動」と言って、先生の指示をしっかり聞いて実行する訓練です。

 まず白線の上につま先を揃えピシッと立つことから始まり、出される指示はどんどん難しくなっていきました。

例えば、年少の最初の頃にやっていたのは

「教室の中を太鼓のリズムに合わせて自由に歩きましょう。途中、笛が1回鳴ったらスキップ、笛が2回鳴ったら寝る、3回鳴ったら片足バランス、手を2回叩いたら体操座りをします。また太鼓が鳴ったら歩いて下さい。では、よーいはじめ!」

という感じです。

 最初の指示を覚えておく記憶力はもちろん、歩いている最中に指示を聞く集中力、正しく行動する判断力が必要ですよね。

 ジャックの体操では、先生の指示が長くて難しいため、子どもがどうして良いか分からず、立ちんぼになってしまうことがよく起こります。そんな時先生は助けません。間違っても良いから、自分の力で次の1歩を踏み出すまでじっと待っているのです。

 そうなると、子どもは晒し者状態です。親としては、もう焦れったくて恥ずかしくて、生きた心地がしません……。そうなるのが嫌で、次の授業までの1週間、必死に練習していきます。当時の我が家はボロアパートでした。指示行動の練習のための太鼓の音や笛の音が、隣近所にかなり聴こえていたはずです。事情を知らない人からすれば、変な家です……。

 体操の練習は、双子であることが良い方向に作用して、娘たちも楽しく練習していました。二人でやるとゲームみたいで楽しいようです。体操の授業は毎回本当に面白くて、僕がどんどんのめり込みました。

 ジャックの体操では、先生の話を聞く力、姿勢を崩さずに待つ力、分からなくなっても諦めずに最後までやり遂げる力、全力で取り組む力を養っていただきました。

「全力期」

 イタリアの教育学者、マリア・モンテッソーリは、6歳くらいまでの時期を「全力期」と呼んでいます。人生の中で唯一、自分の能力の限界を超えて力を出せる時期で、この時期に全力で頑張った子は、生涯に渡って物事に全力で取り組めるようになるそうです。逆に全力を知らずにこの時期を終えてしまうと、もう死ぬまで全力を出すことはないということで……。僕はきっと、この時期に全力を出すことがなかったのだろうなあ……。

 勉強で秀才と呼ばれるような人や、一流のアスリートやアーティストなどは、みんな全力期に全力を出す経験をしているそうです。

 小学校受験に取り組むと、勉強にしろ体操にしろ、その年齢の子どもの能力など遥かに超えた課題に挑戦します。子どもは全力でついていきます。本当に、泣きながらでも諦めずに、最後までやり遂げるようになります。まさに全力期にふさわしい教育です。早いご家庭だと1歳から、我が家でも3歳から、お教室に通って、家で練習してという暮らしをしているので、子どもは苦になりません。「物心ついたときから」というやつです。親さえ怒らずに褒めて褒めて取り組めば、子どもは楽しんで取り組みます。

「子育てにとっても良い影響を与えてくれます」

 また、小学校受験に取り組むと、子育てに明確な目標ができます。生活の全てが、小学校受験にとって意味のあるものになります。ジャックに通っていたから、「来週までにこれをやろう」、「今週はこれができなかったからできるようにしていこう」と、日々課題を見つけて、それを育児に取り入れるように工夫し、実践してきました。

 受験を考えているようなご家庭は、教育熱心でしょうから、夫婦で話し合って、工夫して育児に向かう毎日は、充実していて楽しい毎日になるはずです。

 我が家のような共働きの庶民家庭では、日々の忙しさに追われ、もし小学校受験という目標がなければ、伝統的な家庭行事を「ちゃんとやろう」とは思わなかったはずです。季節の花や、虫、その他、親が興味のない分野にも、まんべんなく意識を向けなければならなかったので、むしろ子育てが情緒的に豊かなものになったと思っています。積極的に公共の交通機関も使いました。

 僕は貧乏お父さんなので、ジャックにかける予算も限られていました。当然開講されている全ての講座は取れません。ジャックで取っていたのは基本的なものだけです。例えば絵画の授業などは取っていません。だからこそ、夫婦での工夫と役割分担が必要でした。

 我々夫婦は、モンテッソーリ教育の基本的なことを二人で勉強して、「怒らない育児」を心がけていました。

女の子

「できなくても問題ありません」

 体操の授業や勉強の授業で、子どもが何も出来ないというのは、後ろで参観している親にとって、本当に辛いことです。

 でも、その時出来なくても問題ありません。だって、相手は幼児です。発展途上です。だいたいのことは「子どもの成長」が解決してくれます。うちの娘は、模擬試験の絵画の点数は0点でした……。重要なのは、親が怒って子どもの自己肯定感を下げてしまわないように、家庭での育児に工夫をすることです。

 そのために「怒らない育児」は非常に重要です。今どき「子どもを怒って育てよう」などと謳っている教育論はありません。怒る人というものは子どもの世界にはいないのです。絵本でも、怒る人は「悪者」です。

 子どもには子どもの世界があって、大人は子どもの世界のルールで考えなければならないのです。もし怒ることがあるとすれば、それは大人の世界のルールを教えるときです。道路に飛び出さないとか、電車の中は静かにするとか、人の物を盗らないというようなことです。

 ジャックに通うことで、僕たちも怒らない精神力を養ってもらいました。それでも、我慢できない時は怒ってしまいますが……。でも、怒らない育児というものを知ることによって、「怒ってしまった自分」を反省することができます。

「ジャックに通って良かったこと」

 ジャックに通って、もう1つ良かったことは「勘違いをせずに済んだ」ということです。ジャックにはずば抜けて賢い子や、いかにもゴージャスそうなお父さんお母さんがたくさんいました。お母様方は綺麗な方ばかりだったし……。

 そういう人たちを知らなければ、自分たち夫婦は意識が高くて、我が子は天才です。

 僕は、地方出身で、子どもの頃から演劇をやっていて、高卒で文学座の養成所に合格して、自分が天才だと思っていました。劇団四季の舞台も、通俗だと思って観ませんでした。今は大好きです。

 もし、僕が東京で生まれ育って、劇団四季の舞台を観たり、すごい人達が周りにいたら、同じように役者を志していたでしょうか?多分違ったのではないかと思います。

 実際僕たちは、娘が年少の頃、受験するなら早稲田、まあ、成蹊くらいは簡単に入れるだろうと思っていました。今思えばとんだ勘違いです……。新年少からジャックに入ったので、自分たちは意識が高くて準備も早いから、家が庶民でも子どもの出来が良ければ入れるだろうと思い込んでいたのです。

 でもジャックには、当然のようにベビークラスやキンダークラスから入会して、赤ちゃんの頃から受験の準備をしているご家庭がたくさんあるから、我が家なんてちっとも早くないのです……。

「庶民がお教室を楽しむには」

 お教室でも、やはりお母様どうしのお付き合いは、少なからずあるようです……。年長でどのクラスを取るのか、どこの学校を受験するのか、お互いに気になるようですし、もしかしたら同級生になるかもしれないし……。でも我が家は毎回夫婦で参観していたので、周りのお母様たちとのお付き合いは全くありませんでした。その点でも、我々は気楽に通いました。

「お教室には行きたいけど、お付き合いが大変そうで……」

と、思っていらっしゃるお母さんは、お父さんが良い防護壁になります。お父さんも参観することで、夫婦で子どもの状況を共有でき、力を合わせて取り組むことができるようになるので、楽しさも増します。

 服装も、僕は無印のジャケットで3年間通したし、妻もDHCの紺のワンピースでOKでした。娘たちは裁縫が上手な祖母が作ったワンピースを毎回着ていきました。

 まあ、僕たちが大丈夫だと思っていただけで、実際は貧乏くさいと思われてたかもしれないですけどね……。実際に年長で通った渋谷の校舎では、まわりのゴージャスさに圧倒されてました……。でもその時には、もう2年間そのスタイルで通していたので、僕たちのメンタルも強くなってはいましたが……。

 お教室の様子もイメージがだいぶ先行しているようです。お付き合いの大変さなんて、あまり気にしなくて良いと思います。

 何より、集団の教室に通い、夫婦で保護者向けのセミナーに参加することで、親のモチベーションが上がります。お母さんだけで参加して、他のお母さんとのお喋りに、時間と神経を使うのはもったいないです。

「色々教えてもらいました」

 ジャックに通って、セミナーに参加して、僕たちは色んなことを教わりました。小学校受験のことばかりではなく、子育て全般に通じることです。

 子どもはどのように褒めると伸びるのか、家庭学習の取り組み方、学習時間以外の時間の使い方……。更には幼児の脳の発達のメカニズムや、心理のことまで。色んな学びがあって充実した3年間を過ごすことができました。何より、3年間授業を参観することで、子どもの成長を実感することができるし、我が子の状態を客観的に観られるので、真剣に育児に向き合うことができました。

 面倒に思えるようなことには、最初から関わらないと決めて夫婦で通えば、悩むことや、心が折れそうになることもたくさんありますが、お教室は本当に楽しいです。

今回はこの辺で。読んでくださってありがとうございます。