私立小学校は意外と気楽です

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勉強している少女

「ジャックでは」

 我が家は共働きで、僕は練馬区で働いているしょぼいサラリーマンです。妻は個人指導で国語を教えていて、私立小学校の補習から大学受験まで色んなお子さんを受け持っています。だから、もちろん僕より学歴も収入も上……。僕は妻には頭が上がりません。毎晩寝る前に妻の足をマッサージしています。

 妻は色んな私立の学校に通っている子たちを見ていますが、総じて皆様リッチです。開業医、経営者…etc。だから、私立小学校にはどんなご家庭が通っているのか、実情をよく知っているほうだと思います。それでも尚、庶民ながら小学校受験に挑んで、現在実際に通っているのですから、自分を褒めてあげたい!

 知っていると言っても、もちろん僕は、実際にそのお父さんたちを見ているわけではありません。だから、年長になって都心のジャックに通い始めた時は、やはり少しショックを受けました。お父さんたちが乗ってくるお迎えの車だって、マセラティ、ベントレー、ジャガー、エスカレード…etc。ベンツやアウディは普通です。当時僕は、古い初期型のダイハツミラジーノに乗っていましたから、当然そんな車に並べられません。わざわざ貧乏アピールをするようなものです。

「保護者の職業」

 極めつけは、学校別クラスで毎月行われていた、プチ保護者会での「願書講座」です。その回では、先生が願書の「備考欄」の例文を紹介して下さいました。「備考欄」には、結局親の職業などを書きます。

「まずは、経営者の場合です……」

「続いて開業医……」

と、ここまでは普通に聞けました。だって僕は開業医でも経営者でもないので、自分とは関係ない話だと思って聞き流せます。

「では、会社にお勤めの方は……」

「〇〇銀行融資部で部長職に就いております……」

「㈱〇〇に勤務しております。私がNY支社に勤務していたとき……」

あぁ、やっぱり会社といっても、皆さん立派な経歴でいらっしゃいますね……。

 慶應商学部を卒業し、ロサンゼルスで就職したけど、日本で医療の道を進みたいと考え、帰国後医学部に行き、勤務医を経て現在銀座で開業しているという例も紹介されました。

 僕は中小企業のただのサラリーマンです。願書に何を書けば良いのでしょう……。

「僕に勝ち目はありません……」

 面談で

「僕は他のお父様たちと違って立派じゃないのですが」

と相談したら、先生は調査書に記入した僕の勤務先を見て、

「ちゃんと働いていらっしゃるから大丈夫です」

とおっしゃいました……。せ、先生、ちゃんと働いてるって、どんなフォローですか……。

 みんなゴージャスな人たちだと分かっているつもりでしたが、イメージしているだけと、実際に目にするのとではやはり違いました。

「小学校に入学しました」

 ところが、実際に私立小学校に入学して通い始めると、意外にもお父様方のゴージャスパワーに気圧される感じもなく、楽しく通えています。娘の学校は、入試中子どもが試験を受けている間に、「保護者説明会」が行われました。当時の校長先生はその中で、

「保護者同士で喫茶店に行ってお茶をする場合でも、必ず割り勘にして下さい。例えコーヒー1杯500円でも、お金の貸し借りはトラブルの元です」

と、言っておられました。ずいぶん庶民的ですよね。

「私立小学校のイメージ」

ゴージャスな男(笑)

 私立の小学校といえば、

「お付き合いが大変」

「ハワイ旅行で待ち合わせ」

「保護者会のバッグはエルメス」

「運動会もスーツ」

「外車でお迎え」

「ホテルの式場を借り切ってお誕生会」

といったイメージがありますよね。当然、そういう学校もあるでしょう。ある小学校では、一時期ホテルを借りてのお誕生会が横行して、マジシャンを呼んだり、歌手を呼んだり、どんどん豪華絢爛になっていったため、「そのような華美なお誕生会は禁止」という校則ができたそうです。有名な名門校はそういうことが実際にあるかもしれません。

 ですが、うちが通っている学校では、今のところはそういう事はありません。

「実際に通ってみると」

 やはり私立なので、保護者会等には紺色で決めて来られる方が多いです。最初はハイブランドキラキラを想像して、緊張しながら行きましたが、そうでもないように思いました。とは言っても、庶民の僕はエルメスのバッグなんてお目にかかった事がないので、実際はいるのかもしれませんね。総じてお母様方は美人です。

 とうぜん、車での送り迎えは禁止です。親同士の関わる機会はほとんどないですし、我が家なんか学校と家が遠いので、プライベートをお互いに知ることもほとんど有り得ません。僕は学校用に買った、「洋服のAOYAMA」の7万円のスーツ1着だけで事足りています。もちろん子どもは制服です。

 むしろジャックの方が肩身の狭い思いをしていました……。

 今年は3年振りに保護者参観の運動会が行われました。せめてラルフのポロシャツくらいは着ていきたいのですが、僕はラルフのポロシャツすら買えないので、少しでもまともに見えるようにと、炎天下の中頑張って紺のスラックスに無印良品のカッターシャツを着て行きました。ラルフローレンのポロシャツも買えない私立小学校のお父さんは、多分日本で僕だけです……。

 また、我が家は庶民の貧乏な家庭なので、「遠い学校」ということが隠れ蓑になっています。

 ある時、保護者会の後でトイレに行っている妻を待っていたら、なんと校長先生に話しかけられました。

「パパの会を作るつもりなので、若いお父さんにも是非参加してもらいたいから、その時は役員に手を挙げて下さい」

と言われたので、

「いえいえ、僕は本当に皆さんと違って立派ではないので……」

とお答えしたのですが、

「またまた、ご謙遜を」

と言われました。校長先生も、まさか僕が中小企業の平凡なサラリーマンだとは思っていないでしょうからね。保護者同士も、お互いに何の仕事をしているかなんて知りません。「私立に子どもを通わせている」という事実が、真実を隠してくれるので、かえって楽になれます。

「むしろ公立のほうが大変なのでは」

 だから、むしろ公立小学校のほうが、みんなが近所に住んでいて生活が丸見えな分、大変なのではないでしょうか?どんな家に住んでいるか、どんな車に乗っているか、どんな仕事をしているか全部分かってしまうでしょう?文房具等の持ち物や服装も自由な分、揃えるのも大変に思えます。私立なら、仮に子どもたちが「すみっコぐらしの筆入れ」が欲しいと言っても

「学校で駄目と言われているから駄目だよ」

 で、全て解決します。子どもたちもそう言われれば納得するしかありません。旅行のお土産物配りも娘の学校は禁止ですし、そもそもみんな色んな所から通っているので、「お友達の家に遊びに行く」という機会も限りなく少ないです。

 だから、「〇〇ちゃんがあれを持っているから」と、ねだられることがそんなにありません。実際にあったのは、「犬を飼っていていいな」とか、「私もピアノを習いたいな」という程度でした。家は賃貸なので、犬の代わりにハムスターを飼いました。娘たちはそれで満足しているようですし、ピアノに関しては、そもそも小学校に行ったら習わせたいと思っていましたので、その機会に始めました。

 習い事は色々通っています。今は出費がきついですが、学童代わりと考えています。塾に行かなくても良い分、習い事に時間を使えます。なんと言っても毎日二人で学校まで電車で通っているのですから、近所の習い事なんて、子どもだけで余裕で通えます。

制服はイメージです
※制服はイメージです

 共働きのご家庭は、お子さんを私立小学校に入れることで、きっと働きやすくなると思います。今は送り迎え必須の大変な学校ばかりではありません。娘の学校はアフタースクールもあります。我が家も習い事とアフタースクールをうまく使って、毎日6時半から18時頃までは子どもたちは家にいません。安心して仕事ができます。

 一応、我が家の娘も夏休み前まで四谷大塚に通っていましたが、問題は難しいですし、学校で出される宿題でいっぱいいっぱいで、塾のワークに手を付ける余裕がありません。学校の方が大事なので辞めました。だって、中学受験はしません。

「学校の宿題」

 学校の宿題も、毎日国語と算数が交互に出されています。問題の質も高く、先生方も提出した宿題を丁寧に見て下さいます。満点になるまで何回でもやり直して再提出します。音読の課題もあります。低学年の家庭学習としてはひじょうに満足です。宿題も低学年の内は、子どもだけでやらせると適当にやるので、親が一緒にやります。特にうちの娘たちは、勝手にやらせるとひどい取り組みようです……。字は雑に書くし、問題もろくに読まずにいい加減な答えを書くし……。我が家では妻の仕事が遅く、僕の方が帰りが早いので、娘たちが宿題をする横で僕は絵を描いています。「中学受験が控えていない」という、ゆとりのなせる技です。

 ただ、私立小ならではの大変なことを、しいて挙げるとすれば、宿題や音読チェック表、毎朝の体調連絡など、保護者がサインするものがたくさんあることです。僕は忘れ物がひどくて、毎日色んな物を忘れてしまいます。宿題やチェック表にはんこを捺すのを忘れて、よく妻に怒られます……。

 元役者としては、音読の課題はとても楽しいです。国語を教えている妻が言うには、声に出して読むことは、国語の学力向上に非常に重要らしいです。高学年になっても、音読させると全然読めないお子さんが意外と多いそうです。

 作文の課題も多く、毎週必ず作文を1つ以上書いて提出しなければなりません。作文は妻の専門分野です。

 娘の通っている学校には、本を読む授業もあり、「言葉」の教育を大変大切にしています。僕たちもその教育方針に共感して志望校に決めました。

 

「学校とお友達への信頼感」

 子どもなので、やはり何かしらのトラブルは起こります。お友達と口喧嘩をしたとか、行き帰りのマナーを注意されたとか。

 我が家の娘たちは「やんちゃ」が服を着て歩いているようなものです。行き帰りのマナーに関しては、1年生の間は本当に苦労しました。1時間以上かけて二人で帰ってきますから、その間に気が緩んで騒いでしまったり、歌ったり、やっぱりしてしまうようですね……。

「おたくの学校の制服を着た、1年生の双子の女の子が……」

と言われれば、すぐにうちの双子だとバレますからね。先生方には本当にご迷惑をおかけしました……。

 大好きな小学校にご迷惑をかけられません。夫婦で改善策を一生懸命考えました。そう思えるのも、一生懸命試験を受けて入った、「通わせていただいている」学校だからです。先生方のことも尊敬し信頼することができます。

 お友達と喧嘩をしたというような時でも、我が家の場合は、相手の方が立派なご家庭だと思っています。「相手が一方的に悪い」とは微塵も思いません。

「娘にも悪い部分があるでしょうから、私共も娘と話し合いました。娘も明日〇〇ちゃんに謝ると申しております。後のことは先生にお任せいたします」

と、素直な気持ちで言えます。

「意外と学校に行く機会が少ない」

 コロナ禍ということもあって、学校に行く機会も、思っていたほど多くありません。学期末の面談もZOOMです。今の所、仕事をしながらでもじゅうぶん対応できています。学校に行くのは、2、3ヶ月に1回程でしょうか。父母会の活動にも参加する、機会は今のところないです。共働きのご家庭には、本当にメリットが多いと思います。

 もちろん、入りたくて頑張って入った立派な学校ですから、保護者会などでいざ学校へ行くと、校長先生のお話も素晴らしく、担任の先生も素晴らしく、気持ちが引き締まります。もう少し学校へ行ける機会が増えてほしいくらいです。

 先程書いた運動会も、子どもたちの全力で走る姿が素晴らしくて感動しました。そりゃ立派ですよね、みんな小学校受験を乗り越えてきた子どもたちなのですから。

「まとめ」

 当然、同級生のお父さんたちは、きっとみなさん立派な方ばかりだと思います。我が家がご縁を頂けた事を、本当に不思議に思います。

 ですが、そもそも僕たちは、みんながゴージャスなことは分かっていて、頑張ってその世界に潜り込みました。それは、娘たちに、僕たちよりもずっと良い人生を歩いてもらいたいからです。

良い教育

良い先生

良いお友達

良い環境で、じっくり時間を掛けて、良い仕事を見つけてほしいと願っています。

せっかく神様がそういう環境を与えて下さったのです。親である僕たちも、娘と一緒に成長しながら、楽しんでいきたいと思っています。

今回はこの辺で。読んでくださってありがとうございます。

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