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娘たちのピアノの発表会がありました。
娘たちがピアノを始めたのは小学校受験が終わってからです。
受験をするかしないかの選択も習い事の選択も、それぞれの家庭ごとに親の子に対する思いや希望があります。
そして取り組んでいる間にも、続けるかやめるか葛藤しながら、その時の最良を考えながら取り組んでいるはずです。
「親の子へ対する思いの象徴」
小学校受験もそうでしたが、大事なのは家庭でどれだけ練習するかです。ほとんどの習い事がそうだと思います。
私も妻もピアノが弾けません。私はギターなら少し弾けるので、簡単な楽譜は読めます。だからピアノのお稽古で最初の頃に与えられていた課題は、一緒に練習できていました。
ところが3ヶ月も経つ頃には課題が難しくなってきて、練習を見ることができなくなりました。
妻は高校生の頃、ピアノを弾けないのが自分を含めて学年に2人しかいなかったことがコンプレックスになっています。
最初は自分ができなかったことを娘たちに習わせられることを喜んでいましたが、娘たちのピアノの練習に付き合えなくなると辛くなりました。
先生からはお稽古のたびに「家での練習が足りない」と指摘されました。
そのため妻は何度もピアノをやめさせようと言いました。
習いはじめて半年ほど経った頃
「両親ともにピアノが弾けないため、家庭での練習が思うようにできません」
と先生に相談しました。先生は私達が全くピアノを弾けないとは思っていなかったようです。
そこで毎回娘たちだけで家でも練習できるような課題を考えて下さり、なんとか続けられました。
娘たちは今では何の問題もなく一人で練習できるので、あの時正直に弾けないことを相談して良かったと思っています。
私も妻も娘にピアノを習わせることに憧れていました。私たちにとって、ピアノは自分たち夫婦ができないものの象徴です。
考えてみれば娘が私立小学校に通うことも、自分たち夫婦と全く違う人生の象徴でした。
もちろん何度も書いているように、中学受験を回避するために取り組んだ小学校受験ですが
「自分たちができないことをできるようになってもらいたい」
「自分たちと違う豊かな人生を歩んでほしい」
という親としての願いがありました。
中学受験を回避したかった一番の理由は、多感な小学生時代を受験のことを考えずに送ってもらいたいという願いです。
私たちは娘に勉強以外のものに取り組んで得意なことを増やし、また将来を考える上での引き出しを増やしてあげたいという思いで小学校受験に臨み、習い事を考えました。
「習い事と中学受験」
中学受験を控えていたら勉強が全てになってしまいます。
今回の娘たちの発表会でも「勉強とピアノのお稽古の両立が難しかった生徒さんがたくさんいた」と先生が講評で話していました。
我が家の暮らしている地域は中学受験が盛んな地域です。
たとえ発表会間近であっても、ピアノの練習より翌週の模試のための勉強のほうが大事だというご家庭が多かったのではないでしょうか?明らかに練習不足だと思える子が何人もいました。
習い事を選ぶときは、色んな期待をこめて選んでいるはずですから、ピアノの発表会は親にとっても大事なもののはずです。
その大事なものよりも優先させなければならないことは、やはり中学受験なのでしょう。
習いはじめたばかりの小さい子たちの方が張り切って練習してくるからでしょうか、みんな上手に演奏していました。練習不足に思えたのは小学校3〜5年生くらいの子たちでした。
その子たちもみんな、ピアノを習い始めたときはたくさん練習をしていたのだと思います。ところが受験のための勉強に割く時間が増えていくに従って、ピアノの練習時間が取れなくなっているのだろうと想像します。
「だって受験の方が大事だし」
「ピアノはいつまで続けられるだろうか?」
「せめて発表会には出させてあげたい」
とそれぞれのご家庭で葛藤があって、舞台に臨んだのだろうと思います。
誰も練習不足で我が子を送り出したくないし、上手くいかない我が子の演奏をつらい気持ちで観ているでしょう。
中学受験に取り組む親御さんも、勉強だけできれば良いとは考えていないのだと思います。勉強もスポーツも教養もバランスよく身につけさせたいと願うからこそ、ピアノもやらせているのでしょうから。
小学校受験をするご家庭も中学受験をするご家庭も、子への願いは同じです。より良い教育環境を願って私立や国立を受験します。
できれば習い事は継続しながら受験したいと考えていたかもしれません。SAPIXも3年は週1ですし、4年でも週2です。金額的な負担も高くありません。週1ずつのピアノとサッカーくらいなら続けられると思うでしょう。
もしくは、3年で塾に入ったタイミングで他の習い事は全ておしまいにする予定だったかもしれません。「3年になったら受験に集中させたいけど、それまでは色んな習い事をさせよう。それまでにはきっと満足できる程度に上達しているはず」と考えていたかもしれません。
しかし子どもの成長も習い事も思い通りにはいきません。同じ習い事のお友達もできるでしょうし、先生との関係もできていて、子どもが「やめたくない」と言うかもしれません。
そして物事を習得するには時間がかかります。「今やめてしまったら、せっかく続けてきたのに何も物になってない」と思ったり、「次の発表会まで出させてあげようかな?」「次の試合までださせてあげようかな?」と思ったりしているうちにやめるタイミングはどんどんずれていきます。
無理やりやめさせることは、できればしたくないと思うのが親心です。やめるならなるべく綺麗な形でやめたいと考えるものです。
塾の負担が大きくなっていって、習い事をやめなければいけないという気持ちと、できればやめさせたくない気持ちとの間で、いつも揺れているのではないでしょうか?
発表会の舞台で思うような演奏ができなかった子たちの姿からは、そんな親御さんの葛藤が想像できます。
『習い事と受験、入学した学校での立ち位置』
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