読み聞かせの新しい形

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読み聞かせの新しい形

 小学校受験に取り組んで絵画や、面接練習などに苦労していらっしゃる親御さんは、祖父母などの年長者から

「あなたが(うちの子が)、5歳の頃はもっと上手に絵を描いた」

とか

「もっと上手に話していた」

などと言われて苛ついた経験を、何度もしていらっしゃるのではないでしょうか?

僕もそうでした

 僕もそうでした。娘たちが描いた絵の写真や、歌っている動画を僕の両親に送ると、いつも決まって返ってくるのは「あなたはもっと上手だった」という返信でした。

 向こうからすれば娘たちも褒めて、その上で僕のことも褒めているつもりなのでしょうが、僕からすれば最高級の嫌味でしかありません。それでよく怒っていました。両親も学習したのか最近は言いません。

「あなたが5歳の時よりも上手だね」

と言われた方が親としては嬉しいです。自分たちも子育てをしている時は同じ気持ちだったはずなのに。

 特に僕は一人っ子なので、両親は僕を育てた経験しかありません。両親の記憶の中では、5歳の頃の僕と7歳の頃の僕は区別がつかないのだと思います。だから5歳の娘と比べて絵が上手な僕は、7歳の僕なのかもしれません。なにしろ30年前の記憶です。

 ですがリアルタイムで子育てをしている方にとっては、5歳2ヶ月と5歳5ヶ月でも天と地ほど差があります。

 そもそも0歳から水泳に通って、1歳から体操に通って、2歳からベビーパークに通って、3歳からジャックに通っている娘たちと比べて、親と一緒にいただけの僕の方が優れていたなんてあり得ません。

 もっとも僕がそう思えるのは、小学校受験に取り組んだからです。僕は歌も絵も子どもの頃から上手かったと思っています。だからもしジャックになどに通わずに、普通に子育てをしていたら

「俺が5歳のころはもっと上手かった」

と思ってしまっていたかもしれません。

子どもはみんな

 僕は小学校受験に取り組むまで、子どもはみんな自由な発想で絵を描いて、大きな声で歌を歌って、恥ずかしがらずに演技をすると思っていました。

 ところが、幼児期の子どもは自由に絵など描けません。家では大きな声で歌っていても、人前に出たら蚊の泣くような声で歌います。突然自由にお話ししてと言われても、何をしたら良いか分からず立ちつくします。

 幼児期の娘たちの姿から「子どもらしい自由な発想でのびのびと」などということは、大人が勝手に描く幻想なのだと知りました。子どもは教わったようにしかできません。

 我が家が小学校受験で一番力を入れて取り組んだのが絵本の読み聞かせです。親の音読を聞くだけでなく、子どもに音読をさせることも国語の力を養うのに効果的だと考えています。実際小学校に入ったら毎日家庭学習として音読をします。

 僕も妻も文系なので絵本に関する取り組みは自分たちも楽しむことができ、進んで取り組んでいました。逆に数や図形の分野は両親とも苦手なので苦労しました。

聞き取り話し方の最後の授業

 ジャックの「聞き取り話し方」の最後の授業では、子どもたちで劇を作ります。元役者の僕としては最後の劇作りはとても楽しみで気合を入れていましたが、幼稚園の子どもだけで劇を作るのはやはり難しいようでした。

 何故ならジャックの授業で行う劇作りには、打ち合わせやお稽古の時間はありません。前の週に役だけ決めて台詞も衣裳も家庭で準備し、ぶっつけ本番で劇をする授業です。当然他の子がどんな台詞を言うか分かりません。要するに即興劇なのでそれはもう難しいです。

 娘たちの通っていた幼稚園はカトリックだったので、毎年クリスマスの時期に子どもたちが聖劇を演じるのが一大イベントでした。子どもたちはみんな立派に劇を演じていて、成長を実感でき感動的でした。子どもはちゃんと練習して臨めば大抵のことは立派にこなします。ですが試験はぶっつけ本番です。面接で何を聞かれても良いように練習をして、どんな絵を描く課題が出ても大丈夫なように色んな絵を描く練習をします。

 聞き取り話し方の授業で最後に即興劇を作るのは、不測の事態に対応する体験をさせるためなのではないかと思っています。実際集団行動観察の試験など何が起こるか分かりません。

 子どもたちの即興劇は不測の事態のオンパレードです。相手役が予想していたのと全く違う言葉を言ったら戸惑ってしまいます。プロの役者にとっても即興劇は難しいのです。

 子どもたちが不測の事態に対応できるようにするのは、実際のところ非常に困難です。臨機応変に立ち回れるのは自分に絶対の自信がある場合に限ります。何かしら不安材料があると、子どもは固まって動けません。

 それだけお話をしっかり理解して、自分が演じる登場人物の作中の役割を理解していなければなりません。

 ジャックの授業でも、固まってしまう子がたくさんいました。

 とても難しい授業でしたが、その分効果的で学びのある授業だと思いました。

 台詞も自分で考えて覚えて行かなければならないし、共同創作なので突飛なことを考えても駄目です。相手がやりやすいようにする必要があるので、相手を思いやる気持ちが必要です。自分の台詞だけ覚えれば良いものではありません。相手がどんな台詞を言うのかを予想しておいて、演じている間も相手がどれだけ喋るのか空気を読む力も必要です。相手の台詞が予想と違った時に狼狽えないようにすることも大事です。

 と言っても昔話はテキストによって登場人物の設定が少しが違ったり、筋書きが少し違ったりします。でも大きな流れはどのテキストも同じです。多少流れが変わっていても起承転結は一緒です。物語を理解する力があれば問題ありません。

劇を作ることで

 劇を作ることで測れる能力はたくさんあります。家庭でも取り入れられれば、小学校受験の集団行動観察で求められる力を養うことができると思いました。行動観察だけでなく、物語の流れを掴む力はお話しの記憶にも役立ちますし、その後の国語力向上にも繋がります。

 そこで昔話を使って親子で遊べるように、朗読劇の脚本を作ることにしました。

 家庭での取り組みの一環として朗読劇を取り入れることにはメリットがたくさんあると考えています。

 まず一つは、読み聞かせは受け身ですが朗読劇にすると子どもも参加できます。声に出して言葉を読むことで語彙も増えるし、話す練習にもなります。面接の練習にもなります。

 2点目は、朗読劇は相手役の台詞も聴いていなければなりません。二人以上で行う集団創作はコミュニケーションです。人の話を聞く力も養われます。相手役がどのように読むか分かりません。予想外の読み方をするかもしれません。集団創作の面白いところです。

 3点目は、劇にすることで登場人物がより立体的になります。登場人物の気持ちを考えるというプロセスを行いやすくなり、後の読解力向上に役立つと考えています。読み方一つで伝わり方も変わります。

 日本ではメジャーではありませんが、欧米ではコミュニケーション力向上や、人の気持ちを理解するための試みとして、教育現場などでも演劇が取り入れられています。

 親子で遊べるので楽しく取り組めるのではないでしょうか。集団行動観察の練習としても取り組めると思います。

 小学校受験は子どもが楽しく取り組めるようにすることが親の役割だと思いますが、年長になるとそれが一番難しいことのように思えます。受験という目標が明確で、タイムリミットがあり、やることも膨大です。

 読み聞かせが苦手な親御さんもいらっしゃると思います。脚本という形式にして子どもと一緒に読めることで、取り組みやすくなるのではないかと考えています。

 あくまで体裁は朗読劇なので準備は何もいりません。想像力さえあれば楽しく取り組めます。

 調べてみると、昔話を朗読劇用の脚本にして紹介しているサイトは意外とありませんでした。読み聞かせの新しい形として、ご家庭で使ってみて下さい。

 普段から家庭で取り組んでいれば、聞き取り話し方の劇づくりにも、集団行動観察にも、学芸会などでもきっと大活躍できるのではないでしょうか(笑)

 

 

   

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